020/:/死にたきゃ、きちんと生きな。



中学のころ学年中から虐められてる女の子がいた。
男子からも女子からも、私は虐めには参加しなかった。だが見て見ぬ振りをしていた。
今考えれば同罪も同じ。
その子は虐められても虐められても毎日きちんと学校に通っていた。
その子にも何人かは友達がいたようだった。それだからなのか。
きっと、私なら途中で不登校になるだろう。
朝礼、席替えで男子と隣になるたびに、隣になった男子から「最悪だ。」「ジョーカーを引いてしまった。」などと聞こえよがしに言われていた。
けれど、決して泣かなかった。
虐められていたせいで俯きがちにはなっていたみたいだったけど瞳の奥の光は失われていなかった。
すごいと思った。私はそんな強い子になれる?
一回その子が泣いているところに出くわしたことがあった。
体育祭の時。友達にそれとなく聞くと学年種目で負けたのは自分のせいだと言って泣いているとのこと。
それなのに周りは「オイ、あいつが泣いているよ。」と影でこそこそ言って笑っていた。
こんな責任感の強い子にあんたたちは罵声を浴びせる気かと殴りかかりたい衝動に駆られたが私たちは中学生。
虐めなんて軽くしか見てなかったし虐められている子の味方をしようなんて人たちはどこにもいなかった。
所詮は皆子供で、人間なんて一人なんだ。

ある日のことだった、部活が終わり忘れ物をしたため教室に戻るとその子が泣いていた。
「大丈夫?」
月並みな台詞しか出てこない自分に嫌悪感を抱く。
その子は少し躊躇したように私を見た後
「今まで、頑張ってきたけど時々思うの・・・。『死にたい』って。」
3年間虐められても虐められても頑張ってきた子が「死にたい」って泣いている。
私には何ができるのだろう。
私だって同罪で声をかけてあげる資格なんてこれっぽっちもないのに。
けど、私に理由を話してくれたこの子に何か声をかけなければと必死に考えた。
「死にたきゃ、きちんと生きな。」
その子が顔を上げる。私も驚いた。
なんか凄いこと言わなかった?
そんな自分を落ち着かせ少しずつ続けた。
「今、死んだらこれから起こる楽しいことみんな味わえないんだよ?この世に辛いことしか残らないんだよ。今まで頑張ってきたんだからもったいないよ。これから起こる楽しいこと味わうために自殺なんかしないできちんと生きようよ。そして、何年か経った後もう一回考えてみて、そのときにまだ自殺したい死にたいって気持ちがあるかどうか。多分なくなってるはずだよ。」
私なりの笑顔を向けるとその子はわっと声を上げて泣いた。
ここには、あなたが泣いたからって影でこそこそ嫌がる人はどこにもいないから。
今だけはこの子に安らぎを。

その後その子は無事私たちと一緒に中学を卒業し、高校生になった。
それからどうなったのかは知らないが元気でやっていることを願おう。
私が今ここで大学生をやっているように。
「もしかして・・・」
キャンパス内で声をかけられ振り返ると元気で明るそうな子がニコニコとした笑顔で立っていた。
「久しぶりだね。中学卒業して以来かな?」
全体的に明るくなったが面影は変わっていない。
私は、嬉しくなった。
「久しぶり。」
「久しぶりだね。今考えるとあなたの言うとおりだった。あれから辛い事もあったけど楽しいこともたくさんあった。今考えたら死ななくてよかったって思えるし、死にたくない。」
中学時代は見せたこともないような笑顔でふわりと笑った。
「良かった。私たちも大人になったから今度あんなことがあったらあなたを守ってあげられる。」
「ありがとう、今もあの人たちに会うのは怖いけど少しずつ変わっていけたらって思ってる。」
「心の傷はなかなか消えないからあなたのペースで良いよ。今度は私があなたの味方になるから。」
「うん。」
桜舞う中私たちはもう一度出会った。今度は、逃げないよ。お互いに助け合って生きていこう。

終わり

あとがき
最初はもっと暗くなるはずでした。数年後会った虐められていた子は「あいつらへの復讐も考えなくちゃいけないしね!」とか笑顔で黒いことを言っちゃうような子になるはずでしたが、あえて素直でまっすぐな子にしてみました。
虐めって虐めた子は覚えてないけど虐められた子はずっと覚えてるんですよね。
ぶっちゃけ私は両方の立場に立ったことがあります。虐めたし、虐められもしました。
虐めた子には今更ながらでもきちんと謝りました。謝ってすむ問題ではないのかもしれない。その子が自分を見て怯えているのなら尚更。やっぱり子供だったからなんて許されるものじゃないですから。人に心の傷を負わせたのなら怪我させたことと変わりない。
虐められていたときは「ここを過ぎればきっと楽しいことがあるんだ!」って信じてました。
両方やった人間の立場から言えることはやっぱり虐めってダメってことです。
虐められた子って人を信じるのが怖くなっているんです。そして、もし数年後虐めていた子が話しかけてきたら思ってあげてください。「勇気を出しているんだ。それに誠
心誠意答えてあげよう」と。

2006、4、水城由羅