大人になる方法〜自分になる方法〜
この話は、大人になる方法の後日談になります。
大人になる方法を読んでからのほうが楽しめると思います。
一月、さわやかな青空。
例年に比べて寒い冬にしては今日は、いつもより温かかった。
「綺麗ね。涼香。」
「すげぇや、ねぇちゃん・・・。」
「えへへ・・・そうかな。」
あたしは、成人式を迎えた。
そして、同時に二十歳の誕生日を迎えた。
少しずつ落ち着いて、あれからいろいろなことを考えた。
考えられる余裕ができた。
すごく嬉しかった。
着慣れない着物は重たくて、草履も足が痛くなる。
まるで、この重さは、これからの大変さ、プレッシャーを表しているよう。
でも、あたしは、それを自分のペースでうまく付き合っていくつもり。
成人式を迎えたから、二十歳を迎えたからっていきなり何が変わるわけじゃない。
それだけで、すぐに大人の心構えができたらそれこそ恐ろしい。
これからどうするかは、自分にかかってる。
どうしたい?どうなりたい?
今は、不安もあるけど、楽しみもあるんだ。
いろんな予想図を描けるから。
もともと緊張しやすい性格だからすっごいドキドキしている。
数日前から本当に緊張状態で自分自身大変だった。
でもね、緊張しやすいってとこ、受け入れることにしたの。
今までは、逃げて見ないようにしていたあたしのマイナスな性格。
調子が悪くなったときから、遠出が怖かったんじゃなくて、本当はもともと、何処か遠出することに対して緊張しちゃう性格なんだって、あれから落ち着いて考えたんだ。
小さな頃からうまくやろう、きちんとやろう。失敗しないように、みっともないところは見せないようにって思って。
親に心のどこかで甘えていたから、親元から遠くに離れたときに、自分ひとりでどうしたらいいかわからなくなってしまった。
甘えていない。って思っていたけど、心の奥では、ずっと、甘えてた。
『誰かがどうにかしてくれる。』心の奥ではずっとそんなことを思っていたんだと思う。
そんなこと無いのに。
そのくせ、大人ぶろうとしていて。
心と体が伴ってない。
だから、ずっと怒られることに恐怖を感じてた。
何かあれば、すぐに「怒られるかも。」
依存していたら怒られて当たり前。
そんなあたしだったんだ。
けど、受け入れなくちゃって思った。
あたしに、どんなにマイナスなとこがあっても、きちんと受け入れ見つめることによって突破口が見つかるなら見つめたい。
見つめている間どんなに大変でも、もう、逃げないんだ。
きちんと、自分の意見を持って冷静に話合えるようになりたい。それで、自分に非があったらきちんと認めよう。
今年の正月のときに翠ちゃんと伯母さんに「顔色が良くなったね。」と言われた。
あの時は、本当に青白い顔をしていたうえ、きちんと笑えてなかったらしい。
顔は笑ってても目が笑って無かったんだって。
いつか心から笑えるようになりたい。
今は、多少心が軽くなった。
あのときみたいにどん底だった気分ではない。
だって、あたしは沢山の人から愛されていることを知ったから。あれから、仲の良い美容師さんたちにも話した。成人式用に髪をセットするのにあたし、すっごい緊張してて、迷惑かけたくなかったから。
そしたら支えになってくれるって言ってくれた。
父さん、母さん、貴緒、おじいちゃん、おばあちゃん、伯父さん、叔母さん、翠ちゃん、友達、セラピストのお姉さん、美容師さん、浅海先生、工藤先生、バイトの店長さん、そして、亮クン。挙げればきりが無い沢山の人たち。
今まで気づかなかった、あたしは、皆から支援されて応援されて生きているんだってこと。
感謝してもしきれない。
普通のままだったらきっと、今も気づかないままだったかもしれない。
甘えて、依存して生きて、それで満足していた。
あたしのことを思って言ってくれても、苛立って突っぱねて、小さな我侭っ子と同じこと、これからも繰り広げていたかもしれない。
そして、誰も相手にしなくなる。
それは、きっととても怖いことで、だから、気づけて良かったって心から思えるんだ。
絶対、人間独りなんかじゃない。
誰かが必ず自分を見ていてくれる。
だから、強くなれる、強くなりたいって思える。
応援してくれた人たちに、いつか恩返しができれば良い。
「久しぶり!すず!」
「久しぶり!変わってないね〜!」
「すずも、全然変わってないよ!」
友達同士集まって、久しぶりに話が弾む。
「どうよ?すず、彼氏できた?」
「できるわけ、ないじゃん。むしろ、恋とかしてる暇なんて無かったよ。自分にいっぱいいっぱいで。結構大変だったよ。」
友達は驚いた顔をした。
「へぇ、何があったの?」
「う〜ん、今度暇な時にでも話すよ。しいて言うなら涼香レボリューション?」
あたしが笑うと友達も爆笑した。
「あはは、ホントすず、変わんないねぇ。嬉しいわ。まぁ、今度、遊んだときにでも話してよ!」
「了解!」
少しずつだけど、遠くに行けるようになった。
成人式の会場は、今まで、電車で行ったことのないトコだったけど、来ることができた。
皆に会うことができた。
あたしの顔も自然と笑顔に変わる。
皆全然変わってなくて、中学生のときに戻ったみたいだった。
けれど、時は確実に進んでいる。
外見も心も確実に大人になっている。
ねぇ・・・あたしも少しずつ成長できているかな?
変われてるかな?
成長に戸惑うこともある。
もう、あの頃には戻れない。
はしゃいで、大騒ぎして何も知らなかったあの頃。
自分自身のことも他人のことも知らなかった。
知ったつもりになって、知ろうとしなかった。
何をやっても許されるようなそんな感覚で。
思春期で、子供と大人の境界線に悩まされることもあった。
少しだけ寂しくもある。
中学生の頃より今のほうが友達関係も深くなるかな?
きちんと、話聞いてもらえるかな?
きっと、大丈夫なはず。
どんなときでも、最初の一歩はとても、大変で重いものだけどその一歩が踏み出せればきっと、進んでいける。
あたしはそれを学んだ。
簡単に、最初の一歩は出ない。
でも、少しだけの勇気があれば踏み出せるって知った。
「すずは、この後どうするの?」
友達に尋ねられる。
「この後、じいちゃんと、ばあちゃんの家行くことになってるんだ。いとこでもう一人、成人迎えた奴がいるから、皆でお祝いなんだ。」
「え〜、残念。皆で、飲みに行こうかと思ったけど。」
そうか・・・もう飲みにいけるんだ。
なんか、まだ、どうどうと飲めない気がするんだけど・・・。
これも、成長している証拠なんだ。
残念そうに言う友達に私は笑って返した。
「また、誘ってよ!いつでも待ってるよ。」
「オッケー!わかった。またメールするわ。」
あたしは、そのまま別れると、迎えの車に乗り込んだ。
「こんにちは〜!!」
家に着くとあたしは、元気良く入った。
もう、亮クンたちも着ていた。
亮クンはスーツをびしっと着ててちょっと、カッコイイと思ってしまった。
「綺麗だねぇ、涼香ちゃん。」
ばあちゃんは、あたしを見て嬉しそうに目を細めた。
「えはは。」
綺麗だねと言われると照れてしまう。
あたし、褒められ慣れてないんだよね・・・。
特に「綺麗」とか言われるとどう反応していいのか困る。
「マジ綺麗だよ!」
翠ちゃんに声をかけられる。
「本当ね、写真撮っていいかな。」
叔母さんがカメラを構える。
「オッケーです!」
外に出ると、じいちゃんもカメラを構える。
それから、ばあちゃんと撮ったり母さんと撮ったりした。
「どうせだから、亮とすずちゃんで写りなさいよ。」
「え!」
今まで、ぼおっとしてた亮クンが我に返った。
「オッ、オレ!?」
「そうよ、あんた、ずっと、すずちゃんに、見惚れてたでしょ?」
「な!?」
「へっ!?」
翠ちゃんの言葉に同時に驚きの声を上げた。
「こんの、馬鹿姉貴!」
「ホントの事じゃない。今更今更。だって、亮ってばすずちゃんのこと・・・」
「あ〜ね〜き〜!!」
顔を真っ赤にして必死で翠ちゃんを止める亮クン。
翠ちゃんは悪びれた様子も無く「おほほほほ・・・」とふざけて笑った。
「あたしが何?」
「なんでもねぇよ!!お前は、知らなくていい!寧ろ知っちゃいけないんだ!」
その言葉にカチンと来る。
「はぁ、知っちゃいけないって何さ!」
「知ったら大変なことになんだよ!」
「はぁ?」
あまりに必死になるから、あたしは聞くのをやめた。意味わかんない。
「すずちゃん、恋することも精神的にプラスになるんだよ。知ってた?」
翠ちゃんがにやりと笑う。
「へ?」
「あ、俺も知ってる。ねぇちゃんが買った本に載ってたぜ。」
貴緒が挙手をする。
「で、二人はあたしに何を言わせたいの?」
「別に〜。」
「亮にぃ、かわいそう。」
「はぁ?亮クン、一体どういうこと?」
亮クンに詰め寄ると、亮クンは顔をそらした。
「しっ・・・知るかよ。姉貴も貴緒も余計なこと言うんじゃねぇよ。」
「なんか、皆知ってるのにあたしだけ知らないの嫌だ!!あ、あたしの誕生日プレゼントとして後で教えること!」
「は!?」
「決定しました!もう、変更できませ〜ん。」
「ほらほら、並んで、並んで。撮るわよ。」
叔母さんに急かされ二人で並ぶ。
「わりぃな。」
「ううん。良いよ。やっぱり一生に一度の記念じゃない。」
「まぁ、そうだな。」
写真を撮った後、あたし達は近所を散歩していた。
「あ〜!これが振袖じゃなくて洋服ならもっと走り回ったりできるのに!!」
あたしは、軽く伸びをする。
「最近は、調子良いのか?」
「うん、まぁ。でも、ここ数日緊張してたかも。」
「涼香らしいや。別に緊張することなんて一つも無いのにな。」
「そうだね。あたしもそう思う。何でなんだろうって考えるんだ。だけど、これは昔からなんだよね。これから少しずつ変えていこうと思うの。もう、逃げたくないから。」
「涼香・・・強くなったな。」
亮クンはふっと笑った。
あたしはそっと首を横に振る。
「ううん、あたしは、強くない。弱いからできることからはじめるの。今までずっと弱かったから認められず誰かのせいにして逃げて強がることによって自分を保ってきた。初めて、本当の自分を見つけられたの。大人になるって言うよりは自分になるだったのかもしれない。」
あの頃のあたしは、大人になるために必死になりすぎて、いろんなものが見えてなくて、沢山のものを置いてきてしまった。
小さな頃からうまく見せようって思いすぎて、逆に気負って空回ってることに気づかずに。
亮クンはそっと、空を見上げた。
「俺もそうだった。自分の力、過信して頑張りすぎた。きっとさ、心の病気って、本当の自分を見つけてあげろって言うサインなのかも知れねぇな。」
「そうだね。必ずたくさん得るものはあるしね。あたし、沢山知ったし学んだよ。だから、感謝もしてる。」
「だな、俺もだ。きちんと、家族から愛されてることを知った。自分自身を大事にすることを知った。無駄になんかはならないんだよな。」
「ねぇ、あたし達これからどんな大人になるんだろうね?」
「わかんねぇよ、それは俺達しだいだ。でも、辛い経験したぶんだけ人は強く優しくなれるんだ。きっと、俺達そんな風な大人になれるさ。」
「焦らなくていいんだよね?」
確認する意味できいてみる。
亮クンはあたしを驚いたように見た後、にっと笑った。
「勿論だ。焦って良い結果はでない。お前もそれは学んだだろう。自分のペースだ。それは、人それぞれだから早い奴もいるし遅い奴もいる。涼香のペースでやれよ!」
「うん。」
たくさんの、思い出たち。それは決してよいものばかりではなくて、辛くて、苦しくて忘れたいような記憶もあるけど必ずそこから何か学べているんだ。
まだ、何を見出せたかわからないものもあるけど、きっと、それは時が経てばおのずとわかってくるもの。あたしの成長の糧になるものだから。
また、いつ襲い掛かってくるかわからない恐怖や不安はあるけれどそれもあたしの一部だからうまく付き合って少しずつ変えられれば良い。
もう、あたしは否定しない。
あたし自身、あたしの周りを認めて生きる。
否定をしてしまったらきりがない。認めることによって気持ちはプラスに変わっていく。
あたしは、完璧な大人でも人間ができているわけでもないから、まだ、頭ではわかっていても、実行に移すのが難しい。でも、それは、皆そうなんだと思う。
全部、病気になってから気づいたこと。
最初の頃は、「何で自分が?どうして自分がこんな辛い目にあわなくちゃいけないの?」って思ったけど、それは全部あたしにプラスになること。
「変われるよ、変わるんだよ。」って自分からのメッセージ。
いきなり、全てが変わるわけじゃ無い。
でも、変えようって思ったところから、全ては変わり始めてる。
スタートはどこからでもできるし、ゴールだって何処でも決められる。
自分次第。
今は闇しかないって思っても、きっと光はある。そのことだけはどんなときでも忘れない、忘れたくない。諦めてしまったらそこで全て終わりだから。
どんなに、向かい風で獣道だとしてもそれが自分の決めた道なら、喜んで挑戦したい。
立ち塞がった壁がどんなに分厚くて高くて大変でも私は絶対に壊せるって信じてる。
抜けた先には沢山の嬉しいこと、楽しいことが待っているって知った。
辛いことばかりじゃない。どれだけ、怪我して傷ついてもそのぶん強くなって、自分を見直せるから。
あたしはこれからも、自分に挑戦できるような人間になっていきたい。
大人になることも、生きることも大変。けど全てひっくるめて楽しんでいければ良いと思う。
終わり
あとがき
後日談、自分になる方法です。
やっぱり病気にしろ、何にしろ辛いときはホント辛いですよね。
「でも、これも自分の成長の糧になるんだ!!」って思ったら楽しくありません?
昔のようには戻れなくても進んでいればきっと昔よりも良い感じになれるかなって思ってます。
2006,2水城由羅