大人になる方法
人に頼るなんてよくわかんない。大人になる方法なんて考えたことも無かった。
だって、普通に過ごしていれば簡単に心も体も大人になれるもんだと思っていた。
あたしは強い子、聞き分けが良くて、真面目で優しくて元気で明るくて手のかからない子。
そうだと思っていた。否、そうでありたいと思ってきた。そうしていれば、いつかホントになって大人になれるって思ったから。それが当たり前だと思ったから。なんて、全部嘘だった。ホントは小さくて、弱くて、泣き虫で、甘えん坊、我侭なまだまだ大人になれない子供なあたし。
きっと、本当の自分も見えていないあたし。
それを隠したくて、全てを当たり前に出来るように頑張ってきた。塗り固めた結果。
塗り固められたものは所詮いつか剥がれ落ちる。
芯がしっかりしていなければ形や見栄えだけよくても意味が無い。
嘘はいつかばれる。積み重ねてきた嘘が増えていけばいくほど後からくるしっぺ返しは大きい。
嘘と同じ分だけのしっぺ返し。
しっぺ返しを食らったときに誤魔化そうとしても、もうムリ。周りは真実を知ってしまっているから。
誤魔化せなくなっているの。
あたしの場合は、その塗り固めてきた嘘が、大人になろうと思って過ごしてきた何年間かのあたし自身。
自分をきちんと見ようとしないで逃げてうまく誤魔化してきたあたし自身。
過去をずるずる引きずって、地面ばかり見て水溜りから空を見てきちんと本物の空を見てるつもりになっちゃてるあたし。
大人っぽい振りして、強がって良い人でどんなときでも「大丈夫だよ!」って笑っちゃってるあたし。
空を自由に羽ばたくにはなにが必要?
大人になるには、自分になるには何が大事?
頼らないこと?
嫌いなものを無くすこと?
親から独立すること?
なんなんだろう・・・。
「大学入学おめでとう。」
「ありがとう。父さん、母さん、貴緒も。」
あたしは、今日、大学生になった。
中学生とも高校生とも違う大人への第一歩だ。
家族でパーティーをしていた。
母さんは嬉しそうだし、弟の貴緒も嬉しそうだ。父さんは表情には出さないがとても嬉しそうだった。
小学生の頃は、小学生、中学生、高校生、大学生ってなるのが普通だと思っていたけど実は沢山の選択肢があったんだなぁ。って知った。
あたし、本当はやりたいことがあったから専門学校に行きたかったんだ。大学にしたのは両親の要望。
あたし逆らうの嫌だから、我慢した。
「涼香、これからも頑張るように。大学生になったのだからもう大人だ。これからは自分で決めて、自分の行動に責任を持つように。」
「はい。」
褒められたことなんて無い。いつも、上に行くことだけを求められた。成績が悪くて怒られたことは毎回のようにある。通知表で10だったときも、テストで満点を取ったり学年で一番だったときも、苦手な教科を頑張って成績が上がったときも褒められたことなんて一度も無かった。ホントは少しだけ褒めて欲しかった。あたしの好きなもの、得意なものを認めてほしかった。
褒められれば頑張ろうって思えるのに。
小学生の時も中学生の時も高校生の時もそれなりにうまくやってきた。勉強を頑張って、世間体を良くして、けど、あたしが本当のあたしでいられる場所なんて何処にも無い。
弟は比較的甘えん坊な性格で両親にも積極的になついていたが、あたしはそんなことはしなかった。弟もそれなりに大変だったから黙認していた。あたしは、ある程度の歳になった頃から甘えるなんて一切しなくなった。甘えることは恥ずかしいこと、駄目なことって自分に言い聞かせてきた。
甘えてごらん?怒られるに決まってる。「お姉ちゃんなんだから!」って。だって、あたしは、真面目で大人で、聞き分けが良くて大人な「涼香ちゃん」なんだから。
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